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2006年05月04日

阪神村上阪急、展望無き統合は禍根への序章。(ニュースの視点)

昨年来、村上氏率いる投資ファンド(村上ファンド)は阪神電気鉄道株の買い占めを続け、現状では発行済み株式の約45%を保有している。
筆頭株主としての強権発動へと動いていると見られている村上ファンドだが、6月29日に予定されている阪神の株主総会を前に、新たに阪急ホールディングス(以下、阪急HD)を交えた新たな展開はまるで茶番劇のようだ。
四月中旬に、阪神株取得を検討していると報道された折には、わざわざ「具体的に検討している事実はない」と否定する見解を発表した阪急HDだが、その舌の根も乾かぬうちに村上ファンド保有株を取得する方向で臨時取締役会開催を検討していることが発覚。
4月24日には臨時取締役会を開きこの方針を確認、株式公開買い付け(TOB)による買取を想定したこの方針は、単に阪神電鉄を傘下に収めるだけでなく、阪神との経営統合までを視野に入れた決定と見られる。
これを受け、阪神電鉄も25日に臨時取締役会を開き、この方針を受け入れる決定をした。
一方、村上氏は阪神に対して株主提案を行い、真っ向から対決する姿勢を示している。この提案は、阪神側の要請により5月2日まで開封を保留、2日になってようやく明らかになった内容は、取締役の半数を村上ファンド側から送り込み経営刷新を図るというものであった。

それにしても泥仕合の様相を呈している展開だが、傍目にはいずれのプレーヤーも異常行動としか思えない。
まず、村上氏・・・目的が不明だが、そもそもなぜここまで深入りするのかわからない。これまでの他の投資案件から見ても、センセーショナルな話題を振って世間の関心を引き、株価が高騰した時点で売り抜ける・・・典型的な仕手細工が得意技である村上氏にとって、趣味(?)絡みで熱くなりすぎて目先が狂ってしまったのか、あるいは最初っからの路線通りなのか判然とはしないが、このまま筆頭株主として強権を押し通しても、あるいは時期を見て売り逃げしてしまっても、自らの評価を落とすことはあっても、良い結果をもたらすことはないだろう。
バックで金を出しているのはおそらく外資系資金だろうが、まさかそちらから、ここまで深く関与しろと指示があったとは思えない。
ちなみに、村上氏は大阪生まれの灘?東大?通産省と言う典型的な・・・

一方、今回の阪急HDによる統合については、4月に入って阪神が阪急側へ検討を打診したのがきっかけとされているが、3日になって村上氏はそれ以前(1月?)に自らが阪神へ提案したが拒否されたと暴露。
いったん拒否した阪急との経営統合に対して、阪神経営陣が最後の望みと託するに至った経緯はわからないが、そこに長期的な展望などかけらも無いことは明白だ。
それは阪急HD側にしても同様だろう。元々そのような展望を描いていたとは思えないし、阪神側からの要請に応える形での決定を行ったとしても、どれだけ明白な展望があるのか。
一説には阪急は阪神の持つ不動産資産に目がくらんだのだ、と言うものがあるが、そう言えば村上ファンドが最初に提起したのも、異常に安い阪神百貨店ビルの「簿記上の価値」だ(帳簿上は900万円だが実資産価値は4?500億と云われている)。
そもそも阪神が大阪・梅田の一等地に持つ不動産は大半が元々鉄道路線だった場所。線路を地下へ「埋める」ことで生み出したものだ。帳簿上の価格が異常に安いのも、これまで取引の対象になったことがないのが最大の原因だろう。
村上ファンドも阪急も表面上はあれこれ建前を出しているが、結局のところは、これらの不動産が狙いなのかも知れない。とすれば・・・

さして明確な展望もないままに合併や統合方針を打ち出し、その後の具体案の検討の過程で潰れて行った統合話はこれまでも多々あった。重化学工業、製薬、銀行・・・etc.etc.
当事者に取っては、結果的には潰れた方が良かったのだろう。
それらの統合話はほとんどが時代の要請や雰囲気、あるいは政府筋からの要請など、さして明確な目的や理由があったとは思えないことが根底にあった。
話が潰れても、それはそれで済んでしまったのは、そのあたりにも原因があったわけだが・・・さて、今回の阪神電鉄を巡る攻防はどう決着が付くのか。
とりあえず6月29日と言う節目がある以上、このまま立ち消えと言うことはありえないわけだが、結局は村上ファンドの出方次第と言うことになるのだろうか。
ある意味、キャスティングボードを握ることは決して村上ファンドの元々の狙いではないと思うのだが、引くに引けない状況に追い詰められた村上氏のこれが「最後の大舞台」とならないことを・・・傍観しておこう(笑

投稿者 shoda T. : 2006年05月04日 21:03

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コメント

村上ファンドは高値で株式を早く買い取ってほしいわけですが、買い取ってもらえないので仕方なく、経営権を取得し優良資産の売却やM&Aを実施することで会社の収入を増やすことにより、株式配当の形で利益を得ようとしていると見られます。
もっとも、優良資産を売られた阪神はゴミ同然になってしまうので、株式を大量保有した状態でこれをするとは思えませんが、阪神タイガースの株式上場はするかもしれません。

投稿者 OA : 2006年05月08日 10:33

まぁ、そういうとこなんでしょうね。
ただそうすると、あまりにもリスキーと言うか、いつまでその手法が使えるかと言うこともありますし・・・
以前に『「阪神」タイガースが「ゴールドマン」タイガースになっても』云々なんて喩え話をしてますが、そのあたりと整合性が取れないような気もします。それって上場するというより外資系へ売り飛ばすことを念頭に置いた発言だと思うんですけどねぇ。
ま、それだけはっきりとした計画性などない、と言ってしまえば身も蓋もありませんが(笑

投稿者 shoda T. : 2006年05月09日 21:12

直接関係はないが、微妙に影響しそうなことが起こっている。
村上ファンドは10日、同ファンドの運用会社機能を従来の日本法人「MACアセットマネジメント」から、3月に設立したシンガポール法人の「MAC Asset Management Pte.Ltd.」に移したと発表した。
移転の理由について「グローバルな展開にも適切に対応するため」としている。
http://www.maconsulting.co.jp/PDF/060510_PR(J).pdf

シンガポールは税制優遇策で外資誘致を積極的に進めている他、シンガポール証券取引所は世界的な取引拠点の一つとなりつつあり、税遇面や資金調達だけでなく運用上からも日本に置くよりも有利であるとの判断があるようだ。

すでにMACアセットマネジメントのWEBページもなくなっているので詳細は不明だが、村上氏の拠点会社(株)M&Aコンサルティングそのものは従来通り。

これに先立ち、8日、村上ファンドは阪神電気鉄道に対して、阪急HDとの統合等に関する情報開示についての要請を行った。
http://www.maconsulting.co.jp/PDF/060509_PR(J).pdf

投稿者 shoda T. : 2006年05月11日 17:36

シンガポール証券取引所は世界的な取引拠点の一つとなりつつあると書いたが、これら「世界的な取引拠点」から東京証券取引所は限りなく落ちこぼれつつある。
理由は・・・一連のシステム障害とか、誤発注問題などの「ちっぽけな」問題が原因ではない。それらをもたらした根源的な認識と展望に問題大有りなのだ。
東証がお手本にしていると云われているニューヨーク証券取引所だが、ここのシステムも古く世界的水準からはかなり遅れているという。そのため、先進システムを持つアーキペラーゴ「電子証券取引所」を買収して挽回への布石を着々と固めつつある。

東証でも2009年までには現在の処理能力&機能不足を補うシステムが完成すると言う。それに対し、東証の西室社長は「能力は今の10倍、スピードは100倍」と胸を張ったと言う。機能面では・・・まぁ、云わぬが花(^^ゞ

そう、2009年である。現在でも東証のシステムの応答時間は世界的水準より二桁も三桁も低いと言われている。それが3年後に・・・生き馬の目を抜くと云われた証券業界も、今では三年後の話に胸を張るのだ。
その頃・・・東証で取引する人が残っていることを祈るのみ(-_-;)

#このあたりの話は大前研一氏のコラムが詳しい。

投稿者 shoda T. : 2006年05月11日 18:32

その後、表立った動きはないが、村上ファンドの狙いはある程度見えて来たように思う。
どうも、村上ファンドは出資者に対して年率30%程度の利潤を約束しているらしいのだが、現在の阪神の株価ではギリギリ満たせるかどうか、と言うところのようだ。株主総会が開かれて株価が落ち着いてしまうと約束が果たせないし、阪急が提示しているTOB価格などもってのほかの安価だし(笑
と言ってこの手のファンドで長期保有など出来るはずもなく、まして経営参加など・・・それで焦っているようだ(^^ゞ
いずれにしても、MACアセットマネジメントのシンガポール移転に続いて、日本での投資顧問業そのものについても廃業届けを出していたことがわかった。
これで日本では直接的に投資顧問として活動することが出来なくなったわけで、このまま阪神株で大失態を演ずれば、投資ファンドとしていよいよ全面的に日本から撤退、いやそれだけでなく・・・と言うことにもなりかねない瀬戸際にあるようだ。

投稿者 shoda T. : 2006年05月16日 14:16

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