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2006年09月28日

非接触カード決済端末共通化へ・・・走った後で考える(ニュースの視点)

27日、電子マネーの代表的存在となりつつある Edy(ビットワレット)と Suica(JR東日本)それに携帯中心の iD(NTTドコモ)と QUICPay(JCB)が来年1月をめどに決済端末を共通化すると発表した。
一般には論評抜きに歓迎ムードで報道されているが、これほど奇妙な話もない。
Edy と Suica はあらかじめチャージしてから使うプリペイド、iD や QUICPay は後でまとめて銀行口座から引き落とすポストペイと、そもそも支払い方式が違うため、4方式を統一する(統一はあくまで端末のみ)のは画期的なこと・・・と思われるかもしれないが、実はいずれもベースになっているのはソニーが開発した FeliCa と言う非接触型のICカード(iDは携帯のみ)である。
しかも FeliCa がここまで普及したのは、ソニーが普及に力を入れたと言うことや競合システムと比べて処理速度が速かったということもあるが、いち早く非常に使い勝手の悪い FeliCa を採用し、ソニーに要求をぶつけることで自システムに適したシステムに改良した香港のオクトパスの功績が大きい。
ただ、オクトパスも FeliCa にとっては所詮は「ユーザ」であって、自システムとして必要な部分については積極的に改良に貢献したが、それ以外の部分についてはタッチしていない。そのため FeliCa には汎用システムとしてはアンバランスな部分も目立つ。

その典型が、FeliCa システムの上位に「被せる」ものに対するフレキシビリティと統合性だろう。ソニー自体も FeliCa 自体を使ってもらえばOKOKみたいなスタンスで臨んで来たところもあり(法的規制とも関係?)、その上に築かれたシステムがバベルの塔化しても「我関せず」。
はからずもそれが如実に表れたのが対応端末の共通性のなさだろう。
今回の端末共通化にしても、ベースとなっているのはすべて同じ仕組みの FeliCa 読み取り装置であり、違いはその上に載っているソフトのみである。
実際、ポストペイ系はともかくとして、プリペイド系に関してはソニーが出している「PaSoRi」と言うPC用の読み取り装置を使えばソフトを変えるだけでいずれのデータも読み取れるし、ソフトに関してはソニー製以外にフリーソフトさえ存在する。ポストペイに関しても、おそらくソフトだけで対応出来るはずであるが、ホストシステムとの通信が不可欠であるためサードパーティ製の対応ソフトは存在しえない。

逆の言い方をすれば、端末が共通化していないことこそ不思議な話で、ソニーが最初から FeliCa 部分と、その上位に位置するアプリ部分の階層化をきちんと設計し、端末の基本仕様を規定していれば、ソフト追加だけで、FeliCa ベースであれば、あらゆるカード/携帯に対応可能な端末を普及させることが出来たはずだ。しかも世はネットワーク時代・・・オンラインでのソフト追加更新も、セキュリティの面さえクリアすれば可能なはずだ。

それを普及期に入ってから端末共通化などと慌てふためくのは・・・非常に日本的で微笑ましいし、端末需要を掘り起こすと言う意味では非常に巧妙な景気刺激策なのか、と感心する :-)
で、実はこの話・・・伏線がいくつかある。まぁ、結局は大所高所からの戦略があってなのか?と言う疑問が限りなく・・・

今回の共通端末については、元々 iD と Suica で共通化の話し合いが行われており、それに他の二社が合流する形で今回の発表となった。端末そのものはJR東日本メカトロニクス(JREM)が開発、製造を行うと言う。ただし実際の開発製造をJREMが行うかどうかは微妙。なぜなら従来から自動改札等にしても、実際はオムロン等からのOEM品の組み立て・カスタマイズだけを行っている会社だから。
で、実は、同日にNECも複数電子マネー対応端末を発表している。構造的にはまさに上記のようなもので、当初6種類の電子決済アプリケーションを搭載し、その後はオンラインで追加したり削除したりすることができる。
ところでこの「6種類」だが、上記の4種に加えてSmartplus(UFJニコス)とVisa Touch(VISA)も入っている。JREMが採用する端末が同じものかどうかはわからない(オムロンあたりの開発品かも)。仮にNECのものだとすれば、今回の4社の協議にこの2社が加わってないのが奇妙だ。
まぁ、そもそもNECは住友系の企業だから、別途この二社も加えた可能性もあるが。

今回の端末共通化のもうひとつの(日本的な)奇妙な面にも苦笑せざるを得ない。つまり今回の共通化に名を連ねているのはいずれも東京を中心とした勢力(しかも某銀行系?)である点だ。見事なまでに、PiTaPaICOCA などの『地方仕様』は外された格好だ。PiTaPa はもちろん、SmartplusやVisa Touch(実質は三井住友主導?)もある意味で「関西系」だし。
今回の発表では「4社以外の決済事業者の参加も呼びかけていく」としているが、発表以前には声さえ掛けてないということか。
つまりは頭を下げてくれば入れてやってもいい、と言うことなのだろうか :-(

投稿者 shoda T. : 2006年09月28日 11:22

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コメント

さすが、関西経済を語らせたら「shoda T.的うぇぶログ」一 :-) 最後のフレーズが効いてます。

えーすみません、失礼なjokeで。

単純に考えて一番不思議というか不自然なのは、ICOCAが入ってないことですね。だってJRじゃん :-) と、みんな思うはず。フツーに電車乗っていると、JR東だ西だ東海だって、意識しないでしょう。ま、私は「東」の範囲を逸脱するのは10年に一度くらいだけど。

首都圏も、パスネットは便利だけど統一してほしいなあ。動きがあるとはいえ、利便性を考えるなら、こっちが先だと思う。

投稿者 rcsakai : 2006年09月28日 16:35

お褒めいただいてありがとうございます(違

っと、まぁ、それはともかく(^^ゞ
ICOCA はまだ電子切符としての機能と普及に精一杯で、電子マネーとしての展開はまだこれからですからね。それにJR東にとってはやはり「格下」感と言うか、うちがやればついてくるだろう的な意識はあるんだろうと思います。

しかしJR東と言う地域限定に縛られた会社が、いくら縛りのない異分野とは言え、Suica で全国展開を狙うのは少し違和感ありますねぇ。
それに鉄道では競合相手がないから、全駅に端末展開するとか、チャージを全クレジット対応(しかも手数料無料)にするとか、そういうサービスには熱心になってない点もなんだかなぁ、と言う気がします。端末共通化でも、こっち面は補強されないでしょうし。

JR西も全駅展開はまだですが、阪急・阪神連合とか、数年先には阪神西大阪線で私鉄網が広域化するなど、競合相手がどんどん手ごわくなってきてますので、そっちで手一杯感があります(笑

投稿者 shoda T. : 2006年09月28日 17:25

パスネットとSuica の相互運用はまだまだ先でしたっけ?
その方面の話題としては、関西じゃすでにその先に行ってます:-)
阪神西大阪線の開通で阪神と近鉄が接続されると、滋賀県から姫路まで5、6社の線路を改札を通ることなく行けるようになってしまうんですが、現状の PiTaPa などは3社以上に渡る「乗り継ぎ」には対応してないらしいんですね。ま、こういう酔狂な乗り継ぎはともかく、3社くらいの乗り継ぎは日常茶飯事になりそうな感じなんですが・・・

なぜ、システムとして汎用性やリニアなスケーラビリティを最初っから組み込まないのか、日本の謎のひとつです :-)

投稿者 shoda T. : 2006年09月28日 17:32

パスネットの非接触型カードは、来年3月の予定です。そこでSuicaと乗り入れができる。

関西の近鉄に匹敵する「県またぎ」鉄道は、少ないなあ。東京を中心にして、北は東武、東は京成、南は小田急、あたりで、関東一円に広がるけど、近鉄は滋賀や三重、愛知まで伸しているのが、すごいや。

>日本の謎

ほんとにね。(自分のmixi日記か誰かのコメントか、どこに書いたか忘れたけどわたしがよくクチにする)すぐに桁が足りなくなる番号体系とか、今回のような目先だけみて開発するシステムとか、しょーもないことが多すぎる。

投稿者 rcsakai : 2006年09月29日 11:43

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