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2010年03月10日

富士通に今何が起こっているのか?(ニュースの視点)

昨年9月に病気を理由に突然辞任した富士通の元社長・野副州旦氏が2月26日に、社長辞任の取り消しと、名誉回復の場として臨時取締役会の開催を求める文書を同社に提出していたことがわかった。
野副氏は社長辞任後は同社の相談役を務めているが、文書は同氏の代理人である弁護士を通じて提出されており、同氏が実際に相談役として出社しているのかどうかはわからないという。

富士通は一旦開催拒否の通達を出していたが、6日に野副氏抜きで臨時の取締役会を開催。野副氏の相談役解任と辞任取消要求の拒否を決議した。

野副氏の社長辞任は病気が理由と発表されていたが、病名等の詳細は公表されていなかった。富士通は臨時取締役会の後、一転して病気ではなかったと云うコメントを発表している。

富士通の説明によると、昨年2月頃、野副氏と親交の深い人物が代表取締役を務める企業(具体名は公表されていない)が、野副氏が担当するプロジェクトの一部に関与。この企業グループは芳しくない風評があるため、調査の結果、同社と関係を持つことはふさわしくないと判断。取締役と監査役が野副氏に注意したと云う。

これに対し、野副氏は当該人物との関与は認めたものの、当該企業グループとは切り離して個人としてのみ関わっているので「改善」は不要と判断。
そのため、取締役会としては野副氏の解職か、本人の自発的辞職の選択を迫り、病気で辞任と云う形で決着したと云う。

一方、野副氏側は「事前に取締役会メンバーの過半数の同意を得た」としても、取締役会での討議ではなく、密室での解職であり法的効力はないとしている。
富士通は辞任理由を「病気療養」としたことについて、「野副氏自身が体調を崩していた事実もあったことから」撤回はしなかった。
しかし、野副氏側は、辞任後通院していたことは認めているが、これは富士通の指示によるもので、肩こり解消のために針をやった程度と云い、病名も診断書も存在しないという。

野副氏側はこの解職の手続き自体に問題があるとしている。

この騒動を受けて、東京証券取引所(東証)は、情報の開示が適正に行われなかった可能性があるとして、同社に対して事実確認で調査する可能性を検討していると云う。
いずれにしても、富士通が野副氏の社長辞任について、虚偽の報告を行った点は否定出来ないようで、東証や投資家は適切な情報開示を怠った点を重視する可能性が高い。

野副氏は新中期経営計画を定めるなど、経営改革に強い意欲を見せていたが、個性の強い人らしく、それが災いした可能性も高い。いずれにしても公表された情報だけでは、何が事実なのか、誰がどのように関与しているのか判断は難しいが、大企業として、上場企業として、役員の任免過程がオープンでないのは大きな問題となるだろう。

投稿者 shoda T. : 21:30 | コメント (0) | トラックバック