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2006年07月06日

ネット時代の記事訂正のあり方(ことばの杜から)

と、まあ、大げさなタイトルだが(笑)、まずはマクロソフトジャパンの元社長・古川氏のブログを見てほしい。この記事・・・まさか訂正されるとか削除されるとかってことはないだろうけど(アーカイブしといた方がいい??)。
→ 古川 享 ブログ:2006/7/5 「日経BP ITPro殿に、苦言

その上で、この記事→「ビル・ゲイツ氏引退の舞台裏:ITpro

さて、古川氏の苦言が功を奏したのか、記事はすでに訂正されている。なかなか手早い、と言うか・・・古川氏だからだろうか。
そう言えば、ずっと昔、日経パソコンの記事について苦言のメール(郵政省メールだっけ?)を出したが、なしのつぶてだった。私だったらその程度の扱いしか受けない・・・(T_T)

だから、と言うわけではないが、何がどう書き直されたのか、検証してみたい。
但し、日経BP社の名誉のためには、何をどう訂正したのかは記事最後の【修正履歴】に明記されていることを指摘しておかなければフェアじゃないだろう(^^ゞ

現在の記事の冒頭はこのようになっている。この部分は編集部で作成した要約で、最も問題となる部分だ。

ビル・ゲイツ氏引退の舞台裏
マイクロソフト日本法人元社長、古川享氏に聞く

 米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が、2年後に経営の第一線を退くと発表した。マイクロソフト日本法人の社長、会長を務め、ゲイツ氏とは20年以上の親交がある古川享氏は、その理由は「個人の時間を何のために使うかの優先順位の問題」だと語る。ただその背景には、スティーブ・バルマーCEOへ権限委譲が急速に進んだことで、ここ数年はゲイツ会長自身、マイクロソフトの将来の方向性を打ち出す立場にありながら、「開発リソースの配分や製品出荷の順番を決めるといった経営に直接関わるところまでは口出しできなくなってきた」こと、レイ・オジーをはじめとする後継者が育ってきたことなど、複雑な事情が絡んでいると打ち明ける。

ネットと言うものは便利なのか不便なのかわからないが、一度公開したものは、簡単には取り消せないものだ。今回のように素早い対応であっても、どこかの検索エンジンのキャッシュには残っているものだ。
今回は Google や Yahoo はタイミングが合わなかったようで、記事そのものをまだ拾ってはいなかった。唯一、msn がキャッシュしていただけだが、これはもしかすると偶然でもなんでもなくて、古川氏のブログが msn であることと関係してるのかもしれない。

msn のキャッシュに残っていた元の記事はこうなっている。

「ビル・ゲイツはネット時代のアーキテクトにはなれなかった」
マイクロソフト日本法人元社長、古川享氏に聞く

 「ビル・ゲイツは、インターネットが牽引する新しい時代のアーキテクトにはなれなかった」。マイクロソフト日本法人の社長、会長を務めた古川享氏は、20年以上の親交がある米マイクロソフトのゲイツ会長が「2年後に経営の第一線を退く」と発表したことに関して、こんな見方を披露する。

 その背景には、後継者としてCSA(チーフ・ソフトウエア・アーキテクト)に就いたレイ・オジー氏の存在、スティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)への権限委譲を急速に進めたこと、組織自体が“恐竜”となっていることなどが関係していると、同氏は指摘する。

微妙な部分では、タイトルから「」が外されていたり、と言うのもあるが、そもそもの論旨が全く違って来ているのがわかると思う。

これ以降の記事は、実際のインタビュー内容がほとんどなので、ほぼ元のままと見ていい。
ただ、【修正履歴】にもあるように、途中に入っている副題が

訂正版:「将来にかかわる方向性を打ち出にくくなっていた」
元記事:「基調講演はここ3年、つまらなくなっていた」

と違っていたり、古川氏がブログで指摘していた削除されていた部分が復活したりしている。復活しているのは次の下線部分だ。

実際、ここ3年ぐらい、ビルがいろいろなところで話す基調講演はつまらなくなってきている。ピークは「Information at your fingertips」(1990年に発表)のころだろう。その後でも、 .NETとか、ともかくキーワード先行でも「未来はこうだ。こんな新しい世界が来る」と発言していたのに、最近はそれが全くなくなっている。ただ彼には、いろんな人間の意見を聞いた時に「この技術には脈がありそうだな」と見抜く力や、たとえその技術やビジネスの中に自分には理解できない部分があったとしても、いいものを持っている人間を直感的に見抜いて、「君に任せる」と全権を依頼して発奮させる力はもの凄い。そして、それを継続して追いかける力が凄い。

古川氏は「2時間に渡り語った」と書いているので、他にも削除された発言が多々あるというわけだ。
古川亨ブログのコメントで水野さんが指摘しているように、ネットに字数制限などないのだから、出来ればインタビュー全文を載せたらいいのに、と思わなくもない。
ただまぁ、この記事自体が「日経コンピュータ」の管轄のようなので、もしかするとこのまま雑誌にも載せるつもりで、ここまで要約したのかもしれない。

今回の日経BPの対応は、まずまず合格点だろうか。ま、その前に最初の記事が・・・と言う点は置いといて、の話だが :-)
実際にはこの記事のように、きちんと「修正履歴」を残して修正されるケースは少ない。知らない間に訂正されていて、しかも訂正などしてませんよ、と知らんぷりするケースも多い。
記事ではないが、通販で違った商品を載せていたのを、こっそり訂正して知らんプリしてたケースも知っている。Google のキャッシュを示してやると慌てて謝罪してきたが・・・

検索エンジンや Wayback Machine などが登場して以来、一旦公開したものは、たとえすぐに引っ込めたとしても、後々までネットのどこかに残って亡霊のように追いかけてくるものだ、と言うことは肝に銘じておいた方がいい。
訂正するにしても、今回の「修正履歴」のような記録を残すなり、それなりの手順は踏むべきだろう。

注:あ、私のブログはITPro とか古川亨ブログみたいに権威あるわけじゃないので、適宜こっそり訂正やり放題です(爆笑

投稿者 shoda T. : 2006年07月06日 02:16

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コメント

ひとつ書きそびれてしまったが、ビル・ゲイツ氏は技術者ではない。チーフ・アーキテクトなどとはお笑い種だ。
古川氏は微妙な表現ではぐらかしているが、本音は似たものなのだろう(「ビルは、機能を集めて製品を作ってきた人」)。

念のために書くが、けなしているのではない。ただ、世の中(特に日本では)ゲイツを技術者だの天才だのと持ち上げる向きがあるが、違うのだ。彼は所謂ブラフ屋で煽り屋であり、きわめて日本的な営業マンなのである。
何度も書くがけなしているわけではない。そういう人間も必要だし、往々にしてそういう人間の方が全体像を見渡していることもある。
ただ、これからの時代(と言うか90年代以降)、技術の細部まで明るい技術的素養のある人間でないと、先まで見通すことは出来なくなっているのではないかと思う。
そういう意味で、ゲイツ氏は何よりも自身の限界を一番良くわかっていたのではないだろうか。
だからこそ、技術的素養を要求されない慈善事業の分野への転出を決意したのだろう。

投稿者 shoda T. : 2006年07月06日 02:42

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